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パラダイス鎖国-忘れられた大国・日本

   

先日読了しました。
Tech Mom from Silicon Valley」を運営されている著名ブロガー、海部美知さんの初著作です。

内容紹介
●世界から忘れられる日本、世界に目を向けない日本人
2008年1月のダボス会議において「Japan: A Forgotten Power?(日本は忘れられた大国なのか)」というセッションが開かれ、国際的に日本の内向き志向が問題視されています。高度経済成長から貿易摩擦の時 代を経て、日本はいつの間にか、世界から見て存在感のない国になってしまっています。国内を見れば、生活便利さや物の豊富さでは日本は先進国でも トップクラスの豊かさを誇り、外国へのあこがれも昔ほど持たなくなりました。そういった日本の様子を著者は「パラダイス鎖国」と呼んでいます。明治以来の 「西洋コンプレックス」が抜けてきたという意味で、それ自体は決して悪いことではないものの、「パラダイス鎖国」は日本にとって、諸手を挙げて歓迎すべき 出来事なのでしょうか?

●「パラダイス鎖国」時代をどう生きるか
産業面においても「パラダイス鎖国」は現実のものとなっていま す。携帯電話、あるいはネットベンチャーなど、日本はブロードバンドインフラで先行しているにもかかわらず、情報家電やITのグローバル市場における新興 勢力とみなされる企業はまだありません。高品質・高性能・先進的というジャパン・ブランドはいまだ健在であるものの、その販路は縮小しつつあり、「値段が 高いだけ」の製品を送り出しているだけになりつつあります。一方、そういった国際環境の中で、「失われた10年」の閉塞感から脱し切れていない日本。なにが「パラダイス鎖国」の元凶なのか。そこから日本人が脱出するすべはあるのか?本田技研工業、NTTといった日本を代表する企業で海外事業に携わり、現在は独立して経営コンサルタントとしてアメリカで活躍する著者の画期的論考。

ブログをたたき台に書籍にされているようですが、ほとんど書き下ろしといってもいいのでは、と。

まず、大切なのは日本の現状をしっかりと認識すること。
海部さんは日本の「パラダイス感」と「鎖国感」の背後を、下記のようにまとめています。

(1)世界2位の経済規模を持ち、その地位は現在でも安泰である。
→潜在力の大きい中国が注目されているが、全体の規模ではようやく日本の半分。アメリカとの差はあるが、そのほかの国と比べると日本は桁違いに経済規模が大きい
(2)アメリカと同様に、国内市場がきわめて大きい。
→他の先進国と比べても、輸出入が経済活動全体に占める比率は比較的小さい。人口や経済規模の大きさから、国内消費が大きいという特徴がある
(3)アメリカでの存在感は最近低下している。
→貿易構造の複雑化により、一時のような「経済的脅威」としての存在感はなくなっている。「悪いイメージはなくなったが、存在感自体が薄くなった」という状況
(4)日々の生活で実感できる「豊かさ」指標では、欧米の大国を凌ぐ水準にある。
→競争力指標や、豊かさ指標などのドレを見ても、共通して言えることは、「インフラが整い、清潔・健康・安全な生活ができる」という特徴である
(5)国民全員が享受できる基本的なもの以外では、整備や変化が進まない。
→高等教育整備、各種権利保護、個別の産業に対する対策など、議論の分かれやすい点、時代の変化によりやり方を変えて行く必要のある点については、なかなか進まない
(6)経済は90年代以降の停滞から完全に脱していない。
→国民一人当たりのGDPの停滞にも関わらず、生活水準の実感は上がっている。日本はお金がなくても気持ちよく生活の出来る「清貧の国」になっている
(7)財政赤字、累積債務、政府部門の効率の悪さが際立った問題である。
→財源確保が困難な中、必要性に乏しい公共事業への投資が続く、という構図が当てはまる。所得が増えず、変化すべきものが変化しないという「閉塞感」の遠因になっている

これらから、海部さんはジャパン・ブランドの衰退と、恐竜化(日本社会の変化が外界の変化についていけない)への懸念を表明します。
また海外へのインセンティブ低下も問題としています。海外への憧れ、要はああなりたい!というモデルの消失ですね。
日本が世界に冠たる豊かな国になってしまった、という現実の中でそれはしょうがないことなのですが、そのまま放置では恐竜化してしまって国家が没落してしまう。そんなパラダイス鎖国を開国に向かわせるには、なにを行っていくべきか。

開国に向けて、時間はかかるけれど有効な処方箋がいくつか本書には提示されています。
キーワードは「多様性」。詳細は読んでいただくとして、さまざまな混沌を生み出しうるイノベーションベースの経済に日本を転換していくことで、あたらしいマーケットを探していこうよ、と。日本人の特性上、難しい部分があったとしても。

個人的に、本書のおかげで自国である日本の見晴らしがよくなったように感じています。
また「自分のため」というスタンスから軽やかに世界とつながっていくことは、むつかしいことじゃないんだというメッセージが素敵。
海外におられるとはいえ、著者の日本に対する愛情を深く感じる書籍でした。

 - 書評のようなもの